水素の作り方(工業用)

最近、脱炭素の切り札として注目が高まっている水素ですが、工業用途の水素の主な製造方法をまとめました。

目次

  1. 電気分解法(ソーダ電解)
  2. 炭化水素の水蒸気改質法
  3. グレー水素、ブルー水素、グリーン水素とは

1.電気分解法(ソーダ電解)

塩を原料に様々な工業製品を製造するソーダ工業は「電解ソーダ」と「ソーダ灰」の2つに区分されますが、そのうち水素を関わりが深いのは「電解ソーダ」です。

「電解ソーダ」は塩水を電気分解し「苛性ソーダ」「塩素」「水素」を製造する工業です。

ソーダ業界にとってはあくまで「苛性ソーダ」「塩素」が目的で「水素」は副生物として発生するものです。

一次的に得られる水素純度は99%以上で、「苛性ソーダ」「塩素」と複合した形で原価を考えられるので製造コストが安いです。

製造プロセスは下記の通りです。

1.原塩を塩水にする

2.薬剤、沈殿法、ろ過フィルターなどで精製

3.塩水を電解槽に入れて電気分解

4.純度99%以上の「水素」と「苛性ソーダ」「塩素」を生成

5.水素は水洗、冷却し純度を99.8~99.9%にして完成

引用:日本ソーダ工業会刊 ソーダ技術ハンドブック 2009

2.炭化水素の水蒸気改質法

水蒸気改質法は原料となる天然ガス、ナフサ、LPG、メタノールなどの炭化水素と水蒸気を約800℃で触媒燃焼させて水素を製造する方法です。

炭化水素中の水素だけでなく、水蒸気中の水素も得れるので工業用の水素発生技術として石油コンビナート向けの大型設備(10万㎥/h)から中・小型の設備(50~1,000㎥/h)まで幅広く普及しています。

天然ガスが原料の場合、

天然ガス+水(水蒸気)⇒水素(H2)+炭酸ガス(CO2)

となります。

製造プロセスは下記の通りです。(天然ガス原料の場合)

1.天然ガスから硫黄分を除去する(脱硫工程)

2.改質器で水蒸気と混合する(水蒸気改質) 

 水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)が発生

 触媒は主にニッケル系触媒を使用

3.一酸化炭素と残った水蒸気を反応させ水素(H2)と二酸化炭素(CO2)にする(変性工程)

4.PSAにより、二酸化炭素(CO2)を除去し水素の純度を高める(精製工程)

 変性工程後の水素純度は約75%、精製工程後の水素純度は約99~99.99%

引用:ガスジェネレーション 2011

水を電気分解し、水素と酸素を製造する水電解もありますが、10㎥/h以下の規模の小さいものしか普及していません。

理由は規模が大きくなってくると消費電力コストの点からソーダ電解や水蒸気改質法で製造した水素よりも割高になってしまうからです。

3.グレー水素、ブルー水素、グリーン水素とは

消費する際には二酸化炭素(CO2)を排出しない水素ですが、現状の主な工業用水素の製造方法(電気分解法、水蒸気改質法)はいずれも、製造に化石燃料を使用するので「グレー水素」と呼ばれています。

ソーダ電解法⇒電気を作るのに石炭や石油や天然ガスを使用している

水蒸気改質法⇒原料に化石燃料を使用している

将来的には、製造時に発生した二酸化炭素(CO2)を大気放出する前に回収することで製造時の温室効果ガスの発生をゼロにした「ブルー水素」や、再生可能エネルギー由来の電気で製造した「グリーン水素」への置換えを目指しています。

ちなみに二酸化炭素を回収する技術には

CCS(Carbon dioxide Capture and Strage)」⇒排出されたCO2を回収し、地中深くに貯留・圧入する

CCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Strage)」⇒分離・貯留したCO2を利用する

などがあります。

水素自動車(FCV)や水素発電など、注目が集まっている水素ですが、今後はよりクリーンな製造方法が世界的に広がっていくと思われます。

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